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Lee-Byung-hun addicted

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ball machines 最終話

ball machines 最終話


「そうだ・・忘れてた」

ベッドで運動を終えた揺は思い出したように急に起き上がった。

「何?どうしたの?」驚くビョンホン。

「プレゼントよ・・あなた頑張ってるから、特別にご用意しました。」

揺はそういうとクローゼットの中から大きな箱を取り出してきた。

「俺は素っ裸の揺で充分だけど。いい眺めだねぇ~」

ビョンホンは箱で前を隠した彼女を手で作ったファインダーで覗いている。

「もう・・いやらしいな・・ね・・早く開けて」

ベッドに戻ってきた揺は彼に大きな箱を渡した。

「何これ?」

無造作に包みを開けた彼は箱を不思議そうに眺めた。

「はいはい。開けて開けて。
本当にほしかったのは30万円もするんだもの・・
私には買えなかったからスエちゃんとお揃いで我慢してね。」

ビョンホンが箱を開けると、中から木のおもちゃが出てきた。


「空港で欲しいって言ってたでしょ。
あれ、George Rhoadsっていうアーティストの作品でね。
あれは高くって買えなくて・・・似たのも30万円もするから・・
これ・・・どう?」

揺はちょっと不安そうに隣の彼の顔を覗き込んだ。

ビョンホンは黙々と一緒に入っていたビー玉を袋から出している。

そしておもむろに一番上の穴にビー玉を入れた。

木とガラスのぶつかり合うカラカラという心地よい音と共にビー玉は転がり落ちていく。

落ちた玉を拾ってまた上の穴に入れる。

カラカラカラ・・・綺麗な音が薄暗いベッドスタンドに照らされた室内に響く。

「面白いね・・・この音がいいよ」

ビョンホンは満足げに微笑みながらまたビー玉を落とした。

「ちょっと・・・子供っぽかったかな」

心配そうにビョンホンの顔を覗きこむ揺。

「いや、気に入った。大切にするよ。
いつか・・・ホンとこれで遊ぶことにする」

「良かった・・・ありがとう」

「ん?なんで揺がお礼を言うんだよ。俺がもらったのに」

「なんでかな・・でも今とっても嬉しかったから・・『ありがとう』でいいのよ」

揺はそういうと彼の胸に抱きついた。

「変な揺・・」

ビョンホンは木のおもちゃをベッドサイドに置くと揺をそっと抱きしめた。

きっと・・・・ホンのことを思い出してるんだろう・・・

彼女が口にしなくともそんなことはすぐにわかった。

余計なことを言ったか・・・でも・・・口にしたら本当になる・・・
そんな気がした。

「揺・・・愛してるよ」

多くを語る代わりに、彼は揺のすべてを愛することにした。

髪にそっとキスをして・・額・・瞼・・鼻・・ゆっくりと優しく。

いつかきっとまた会える・・・愛し合いながら心の中で二人は同じ言葉をつぶやいていた。

           



「ビョンホンssi・・ここ何時にでれば間に合うの?」

翌朝、温かいコーヒーをマグカップに注ぎながら揺は彼に尋ねた。

「仕事は午後なんだけど・・
昨夜さすがに食べ過ぎちゃったから午前中にGYMで身体絞ってからにするよ。
あれぐらいの運動じゃ全然足りない」

「・・・・じゃ、もう一回する?」

揺は上目遣いに彼を見つめてにっこりと微笑んだ。





「あ~仕事サボっちゃおうかなぁ~」

真っ白なシーツの上で彼がつぶやいた。

「そんなこと・・・思ってないくせに。さあ、もう支度して」

揺はジーンズのベルトを締めて笑いながらそう言った。

「思ってるよ。
揺とこうやって一日またベッドにいられたら・・あんなこともこんなことも・・」

そうつぶやき続ける彼の唇に揺はそっとキスをする。

「いい子だから・・・支度しましょう」

彼女は諭すように言った。

「はい・・・あ~身体を二つくれぇ~」

ビョンホンはそう叫ぶと枕を天井に向かって投げ上げた。


    


「ビョンホンssi・・・私、そろそろ日本に帰ろうと思ってるんだ」

ダウンタウンにあるGYMへの道すがら揺はビョンホンにそう切り出した。

「え?何で?何で帰っちゃうの?」

ビョンホンは驚いたように尋ねた。

「だって・・私ここにいてもあなたに何もしてあげられないもの・・」

「そんなことないよ。何もしてくれなくても揺がいてくれるだけで安心するし、
顔を見るだけで元気が出るんだから・・・」

「そっかぁ・・一応役に立ってるんだ・・良かった。
そういってくれてありがと。嬉しいよ。
でも・・・本当は帰るのは私の都合なの」

「仕事?」

「それもある。今月の半ばから頼まれてる仕事があるし・・・」

「他に何かあるの?」

「私ね・・・・カンヌであなたに会いたい」

「え?」

「カンヌ・・行けるんでしょ?」

「ああ・・だいぶ前から頼んであるからね。

もし、呼ばれたらスケジュール空けてもらうことになってる。

ちょうどその頃はチェコで撮影してるから・・」

ビョンホンは嬉しそうに言った。

「私ね・・・三年前カンヌに行ったとき、まだあなたのこと知らなかったの。
だからカンヌで『甘い人生』見てないし。
あなたのレッドカーペット歩く姿も見ていない・・
それがとても残念で。
今度そういう機会があったら絶対に行くって決めてたんだ。
今の状態じゃ仕事で行くなんてとても無理だし、
こんなに遊んでたら自腹で行くのもかなり厳しいの。」

「俺がチケット送るから問題ないじゃん。
そっかぁ~カンヌで揺に会えるんだ・・」

ビョンホンは揺の思いを知り、ニヤニヤと微笑んだ。

「それじゃ、意味がないの。私が私の甲斐性で行かないと意味がないのよ」

彼とは対照的に真剣な表情で揺はそう声を荒げた。

「全く・・。誰の金で行ったって関係ないと思うけど・・」

そういう彼の口は少し尖っていた。

「とにかく。あなたを残して帰るのは辛いけど・・・
私、帰って仕事する。それで必ずカンヌに行くから・・・
カンヌで会ってくれる?」

車はいつのまにかGYMの駐車場に着いていた。

「・・・・仕方ない。揺がそう決めたなら言うことないよ。
頑固だからな。その代わり絶対にカンヌに来いよ。待ってるから」

揺がそういう考え方をすることは今に始まったことではない。

しばらく黙っていたビョンホンだったが、
揺の真剣な表情を見ながらゆっくりそう口にした。

「・・・・」揺の声は言葉にならない。

ただ何度も頷いた。

「全く・・・生真面目っていうか・・融通がきかないっていうか」

ビョンホンは呆れたように笑って揺の頭を引き寄せるとクシャクシャと撫でた。


           


「やっぱり大きいのは違うね・・・これいくらなんだろう・・」

「じゃあ、GIジョーが大当たりしたら買うか」

「そうね・・・ソウルの家の玄関に置いたら?」

「え~俺の部屋に置く。揺にも遊ばせてやるよ・・一回10ウォンね」

「お金取るの?意外にケチだよね・・」

LAXの出発ロビー。

数日後、荷物をまとめた揺は日本への帰路についていた。

撮影を終えたビョンホンは慌てて空港に駆けつけた。

二人でGeorge Rhoadsのオブジェを眺めながらたわいもない話をして笑っていた。

「揺・・・」

ビョンホンはオブジェから目を離すことなく彼女に話しかけた。

「ん?」

「俺があのボールみたいに変なところで立ち止まったらさぁ・・
後ろから来て押してくれる?」

二人が眺めていたオブジェの途中で止まっていたボールに後から来たボールが当たり、二つは仲良く出口に落ちていった。

「うん。『蹴り』入れてあげる」

揺はそういうと彼のお尻に膝蹴りを入れる真似をした。

「俺がさぁ・・・もしあのボールみたいにひとりぼっちだったら一緒に寄り添ってくれる?」

新しいボールがまた落ちていく。

片隅の谷間にひとつだけはまっていたボールのところに、
それは転がっていき、二つはそっと寄り添った。

「うん。もちろん・・・いつもあなたの背中をちゃんと見てるから・・大丈夫。
前向いてどんどん歩いて行っていいよ。
振り向いて確認しなくても・・・ずっと一緒だから」

揺はそういうと彼の腕にしっかりとつかまった。

「うん。じゃ、カンヌで会おう」

「うん。必ず自腹で行くから」

「電話する」

「うん。夜中でも朝でもいつでもいいからね」

「ああ・・」ビョンホンは嬉しそうに頷いた。

「ちゃんとご飯食べてね。
あんまり小さくなっちゃったら、後ろ振り返ってもいないかもしれないわよ」
揺は意地悪そうに言った。

「約束が違う」むきになるビョンホン。

「だったらちゃんとご飯食べて。
今度、カンヌで会ったらまたステーキ食べようね」

「うん。焼き方勉強しておけよ」

「わかった」

「みんなによろしく」

「うん。お母様に電話してあげてね」

「わかってる」

「それから・・・」

「ん?」

「愛してる」

揺はそういうと人目をはばかることなく彼にゆっくりとキスをした。

George Rhoadsのオブジェがタイミングよく鐘を鳴らした。

「凄い!やっぱこれ買おう。毎晩鳴らしっぱなしだな」

ビョンホンは悪戯っぽくそういうと眉の片方をぴくっと上げた。




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